幻のテレビ局、大阪テレビ放送。

なかけん。です。


さて、皆さんは「大阪テレビ放送」というテレビ局をご存知でしょうか。
かつて、大阪にあったテレビ局なのですが、現在の「朝日放送(ABC)」の前身の一つとも言える放送局なんですよね。

1984年の「とんがり帽子のメモル」から現在のプリキュアシリーズ(今年度は「スイートプリキュア♪」)までの日曜朝8時30分アニメ枠(アニメ制作は全て東映アニメーション)や「パネルクイズ アタック25」「探偵!ナイトスクープ」などの番組を制作している「朝日放送」って、関東には馴染みがない(私は東京在住です)けれども、どんな放送局なんだろうと思って、色々とウィキペディアなどで調べてみました。
ABCこと「朝日放送」は、大阪にあるテレビ朝日系列の放送局なのですが、その歴史を辿っていったら、本体の朝日放送以外の前身の一つに大阪テレビ放送という放送局があったことを知りましたので、ここで紹介します。



大阪テレビ放送」(OTV)とは、朝日新聞社×朝日放送×毎日新聞社×新日本放送(現・毎日放送)の4社合同で1952年8月に設立された放送局で、1956年11月1日にサービス放送を行った後、同年12月1日に開局されました。
当時の大阪はNHK大阪放送局しか開局されていなかったこともあってか、OTVの開局は民放では初めての関西進出ということになりました。本社は堂島に置かれ、送信所は生駒山に建設されました。当時のコールサインは「JOBX-TV」(現在は大分朝日放送コールサイン)といい、略称はOTV(現在は沖縄テレビ放送の略称)と言いました。
スタジオは第1スタジオ〜第4スタジオまであり、第1スタジオではプロレスの試合が行われたこともあったそうです。


朝日放送×毎日放送の合同で設立された放送局とは言っても、現在で言うようなコラボレーション的なカラーはあまり打ち出されなかったようで、各放送局や各新聞社(朝日新聞社毎日新聞社?)から提供されるニュースが放送されいたそうです。
大阪テレビ放送独自の報道体制も充実させて、コーポレートイメージも独自のセンスをアピールしていて、大阪テレビ放送は当時としてはかなり先鋭的なテレビ局だったようです。

しかし、元々はラジオ放送局だった朝日放送毎日放送が「ラテ兼営局」として、それぞれ独自にテレビ局開局を進める計画が進んだため、大阪テレビ放送は言わば用済みとなってしまったそうです。
大阪テレビ放送をどちらか継承するかは、毎日放送朝日放送の社長同士がジャンケンをした後にくじ引きで決めたというエピソードがあって、最終的に毎日放送が独自に免許申請を行って朝日放送大阪テレビ放送と合併するということになりました。

合併契約調印後は暫定局名として朝日放送大阪テレビ」(ABC-OTV)に変更されましたが、正式合併後は朝日放送テレビとして1959年6月1日に開局したため、結果として開局から約3年で消滅(閉局)となり、関西の放送ファンの間では「幻の放送局」としてその名が知られるようになりました。



2011年7月24日、地上アナログテレビ放送停波前のクロージングとして、朝日放送の社屋の歴史がスライドショーで映し出されましたが、最初は天六の街頭テレビと大阪テレビ放送時代の堂島社屋、BGMも故・服部良一氏作曲の「OTVシグナルミュージック」(元々は大阪テレビ放送のオープニングでしたが、朝日放送合併後も初代オープニングである未来都市バージョンで使用されました。)から始まりました。

映像の構成としては、
OTVシグナルミュージック」……画像は大阪テレビ放送開局時に街頭テレビ(日本ビクター社製)に群がる人々、大阪テレビ放送/朝日放送堂島時代の旧社屋(1956年7月28日〜1966年5月、現・ANAクラウンプラザホテル大阪(旧・大阪全日空ホテル))
「世界の日の出(BGMは坂本龍一氏作曲)」……画像は朝日放送大淀南のABCセンター時代の旧社屋と大阪タワー(1966年6月〜2008年8月5日)、最後は福島区福島現社屋(2008年6月23日〜)
ラストは、未来都市バージョンで使用された書体で「JONR-TV」、右下に「ch6」と故・岡本太郎氏作のロゴが入って終了というものでした。「JONR-TV」のアナウンスがあって「ch6」のアナウンスがない(無音で終わる)のは、朝日放送はこれからも続きますよという意味合いなのではないでしょうか。

このクロージングが結果として、朝日放送大阪テレビ放送時代も含めて関西圏では最も歴史の長い放送局である」ということを視聴者に見せつけることになりました。


「テレビも地方の時代」と言われた当時ですが、もし朝日放送にも毎日放送にも合併されずに存続していたら、非常にユニークな放送局として親しまれていたでしょうし、幻というより「伝説のテレビ局」として名前が関西ローカルで知られていたことでしょうね…。(…と、思いを馳せています。)