お詫びCM。
なかけん。です。
通常のCMとは雰囲気が全く異なる……殆どの場合静止画などで構成され、視聴者(消費者)に対してナレーションが淡々と事故の謝罪をして、製品の無償点検・無償交換を呼びかけるCM。
それが、「お詫びCM」です。
2005年12月に、当時の松下電器産業(現・パナソニック)の「ナショナルFF式石油暖房機」の回収CMを機に、現在までナショナルをフォーマットとして、数々の企業がお詫びCMを流しています。
「ナショナルFF式石油暖房機」以降、2007年頃までにかけて企業の製品の不具合がセンセーショナルに報道されていた時期に合わせて、各社が続々とお詫びCMを放映するに至りました。
現在ではかつてのようなセンセーショナルに報道されるようなことは一時期と比べて少なくなりましたが、お詫びCM自体は現在でも放映され、製作し続けられています。
「お詫びCM」の発祥としては、1984年に発売された三洋電機の石油ファンヒーター「CFH-S221F型」によって、一酸化炭素中毒となり、うち4人が亡くなられた事故を受けて、1985年〜1986年にかけて放映されました。ナレーションはJR駅案内などのナレーションで有名な津田英治氏が担当されていました。
このCMは通常のCMとは一線を画したCMであるとして当時の視聴者に強く印象が残り、長らく映像未発見となっていた伝説のCMでもありました。一時期は個人製作によるFLASHでの再現CMも出回りましたが、後に本物の映像が発見されてアップロードされ、
なお、三洋電機は2007年にも扇風機発火の事故を受けてお詫びCMが再び製作され、上記以来22年ぶりの放映となりました。
正式にお詫びCMを放映した企業としては、下記の例があります。
【お詫びCMを放映した企業】(時系列順)
■三洋電機……石油ファンヒーターCFH-S221F型事故(1985年)、扇風機発火事故(2007年)
■日立製作所……冷凍冷蔵庫発火事故(1986年)、冷蔵庫CO2削減量不正表示(2009年)
■雪印……「料理バンザイ!」にて。雪印集団食中毒事件、雪印牛肉偽装事件(2002年)
■三菱ふそうトラック・バス……リコール隠し(2003年)
■松下電器産業[現・パナソニック]……FF式石油温風機事故(2005年)
■パロマ……湯沸器死亡事故(2006年)
■アイリスオーヤマ……シュレッダーによる指切断事故(2006年)
■リンナイ……湯沸器死亡事故(2007年)
■INAX……浴室換気乾燥暖房機発火事故(2007年)
■淀川製鋼所[ヨドコウ]……ヨド物置閉じ込め事故(2007年)
■日本生命……保険金不払い問題(2007年)
■政府広報……年金記録問題(2007年)
■日立ハウステック[現・ハウステック]/日立アプライアンス……ミニキッチンユニット用電子こんろスイッチ不具合(2007年)
■サンウエーブ工業……ミニキッチンユニット用電子こんろスイッチ不具合(2007年)
■日本たばこ産業……JTフーズによる食中毒問題(2008年)
■ADEKA……ハローキティ電動式カイロ発火事故(2008年)
■伊藤ハム……地下水汚染問題(2008年)
■マンナンライフ……蒟蒻畑窒息事故(2008年)
■小泉成器……電子レンジ発火事故(2008年)
■アリコジャパン[現・メットライフアリコ、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー]……個人情報流出
■長府製作所……石油ふろがま無償点検(2008年)
■トヨタ自動車……大規模リコール問題(2010年)
■日清食品……タイムカン回収(2010年)
■岩谷産業……電子レンジ発煙・発火防止無償提供(2011年)
■東京ドームシティ シアターGロッソ……東京ドームシティアトラクションズ スピニングコースター舞姫事故による「天装戦隊ゴセイジャー」ショー中止告知(2011年)
■武富士……倒産による過払いの債権届出告知(2011年)
■東京電力……福島第一原子力発電所事故(2011年)
■サントリー……いい湯だヨ!全員集合キャンペーン中止(2011年)
また、上記の「お詫びCM特集」では、上記にある、
松下電器産業(3バージョン)、リンナイ(3バージョン)、パロマ(2バージョン)、日立ハウステック/日立アプライアンス(2バージョン)、サンウエーブ工業(2バージョン)、JTフーズ(3バージョン)、政府広報(2バージョン)、INAX、アイリスオーヤマ、淀川製鋼所、三菱自動車、小泉成器、先ほどの三洋電機(1985年2バージョンと2007年)のお詫びCMが確認できます。
その他、テレビ番組に関するお詫びもあり、「俗・さよなら絶望先生」や「劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼」もあります。
また、「お詫びCM」とは種類が違いますが、本年3月11日に発災した東日本大震災によって、多数の企業が震災お見舞いCMを流しました。「震災お見舞いCM」は「お詫びCM」とは違って、事故による謝罪ではなく(東京電力は別)、被災された方々へのお見舞いと、震災によってその企業の製品をなくしたり使えなくなったりした場合は対応窓口の番号やアドレスが明記されているなどがあります。
ただ、「震災お見舞いCM」は「お詫びCM」とフォーマット(構成)が似ているため、「震災お見舞いCM」も取り上げます。
お見舞いCMを流した企業としては、下記の事例があります。(順不同)
■日立グループ(通常CM「日立の樹」を使用)
■オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート、通常CMを使用)
■丸井グループ(マルイ)
■ヰセキグループ
■三菱UFJニコス
■ヤマト運輸……ナレーションはTOKIOの城島茂氏。
■JX日鉱日石エネルギー(ENEOS)
■コスモ石油
■三井住友海上
■日本生命保険相互会社
■住友生命保険相互会社
■第一生命
■アクサ生命保険株式会社
■全労済
■オリックス生命保険株式会社
■JAバンク
■JA共済
■スタジオアリス
■積水ハウス
このように、通常は製品の内容を紹介するような明るい印象を持つというのがコマーシャルメッセージとしては一般的ですが、いつの時代も製品の事故等に関してお詫びをする「お詫びCM」は、一般的なイメージとはかけ離れている存在であるが故に、非常に印象に残って話題になることも少なくありません。
ただ、いくら「お詫びCM」とは言っても、複数の企業がナショナル(現・パナソニック)のフォーマットに酷似させたものばかり放映していたり、短期間にわたってでしか放映されていない場合は、逆に印象に残りにくいこともあります。(ただ、CM自体はテンプレート的であっても、東京電力のように事故の規模の大きさとともに印象に残る企業もあります。)
私は、ナショナルが放映されて流行った中学3年生から不謹慎ながら「お詫びCM」に興味を持ち始めて、以来現在も放映されるものがあれば随時チェックしたり、新聞広告などでも製品に関する「お詫び広告」があるかないかチェックしたり、何度も掲載されている場合はCMとして放映されるのではないかと予測を立てたり、掲示板をチェックしたり…などをしています。
皆さんも、チェックしてみてはいかがでしょうか。