サンリオSF文庫。

なかけん。です。


さて、
皆さんは「サンリオSF文庫」ってご存知ですか?
サンリオSF文庫」とは、サンリオが1978年から1987年にかけて刊行されていた文庫のことです。
刊行されていたラインナップも結構マニアックなもので、出版当時から多くの話題を提供してきましたが、絶版になってからもその異例の高値のため数々の伝説を生み出した文庫だそうです。
背表紙には、トレードマークともいうべき楕円で囲まれた火星人のイラストが全冊に付けられています。刊行時期によって、背表紙の色とトレードマークの色は違うんだそうです。


サンリオSF文庫」の特徴としましては、先述したマニアックなラインナップと硬派な内容もそうですが、表紙も特徴があります。とはいっても、表紙の構成はほぼ統一されており、至ってシンプルです。
表紙での特徴というのは、実は表紙に使われているイラストで、これがかなり独特な雰囲気を醸し出しているんですね。一応、内容を加味してイメージされたイラストではあるのですが、全体的に暗めで不気味な印象を与えるものも数多く存在しています。
作者別では最も多いのが加藤直之さんで22作品手がけています。独特の素描画に近い漫画的な人物画に、メカ物の組み合わせで独自の世界を創りあげていますが、暗くて抽象的な感覚を与えることは否めません。
次に多いのは角田純男さんで15作品あります。この方のイラストは人物画が基本ですが、これが強烈な印象を残すものばかりです。
特に、「サンリオSF文庫」史上最も不気味だと言われているのが、「猫城記」の表紙にある真っ白な擬人化猫で、これは表紙だけでも一見の価値があるのではと思います。


裏表紙には要約と紹介が掲載されていますが、これが20文字×20行の最大400文字という異例の長さを誇っています。
どのくらい長いかというと、こんな感じです。

2039年−地球全体が超システムで統合されている時代に奇妙な病気が流行しはじめた。熱い太陽は全身がまだら模様に、深海魚は鱗状の湿疹が浮きあがる。ともに社会への不適応からくる分裂性逃避症候群だ。この病気が精神的にも物質的にも安全を保障している平和な社会-ブレイン・コンタクトの管理のもとにイメージメーカーのシナリオに従って空間幻覚(スパシオニック)と模像知覚(シミュレーション)を通じて夢想する太陽や海や草原といった偽りの冒険を与えてくれる超システム社会を脅かしている。それでなくても技術者同士のいさかいに端を発した超システム間の戦争、拡大するメカニズムの危険を予言して何百万もの弟子から信奉されている無政府主義者の活動があるのだ。それにしても熱い太陽と深海魚は病気といえるのか? 空の彼方の楽園への燃える生と、冒険への欲求、そして母の子宮という海へ、世界の奥底にひそむ安息と神秘への欲求が何の病気なのか? フランスSF界の鬼才による力作」

正直、あまりに長すぎて最後まで読む気がおきないですね。
これは、売れ行き不振で断裁処分となったという、「熱い太陽、深海魚」の紹介文だそうです。
これは紹介文からも窺えるように、内容自体も文庫中最も難解なものの一つに数えられているんだそうです。


「サンリオっていうからキティちゃんのことかと思ったけど、全然違う変な本ばっかりなのね。」
そうなんですね。
サンリオSF文庫はキティちゃんと同じサンリオの作品なんですが、俄には同じ会社のものとは思えない硬派な一面を垣間見せてくれています。逆に硬派な者の間からでは、威厳も伝統もない軟派な会社が出す本として軽視されていたという風潮が多少なりともあったのではないかと思われます。

先述した通り、「サンリオSF文庫」は既に廃刊しているので、現在書店で入手することは不可能です。また、古本屋に行っても入手することすらも困難で、在庫があったとしてもかなり高額な値段となっているんだそうで、少なくとも定価より安いものはないと考えていいと思います。
もし自分が見つけたとしても、わざわざ買って内容を読もう、全てコンプリートしようなんて思わないですけどね。まぁ、世の中には物好きもいるもので、初版、重版と同じ本でも刊行年順にコンプリートしている方もいらっしゃいますけどね…。


サンリオと言えばキティちゃんやマイメロ、シナモンなどのキャラクターものではありますが、こういったある意味黒歴史的な部分も結構あって、探ってみると、サンリオってやはり野心的な会社なんだなぁなんて思います。(あれ、これは前にも書いた文章だよな??)
就職活動する時も、企業に対して一方的なイメージだけで入社するのは良くないですね。
その企業の過去の歴史的側面やなかったことにしたい黒歴史的な側面など、役立つかどうかといったらトリビア以下なのかなとも思いますが、ちゃんと調べた上で企業選択をしたいものです。