コクリコ坂から。

なかけん。です。


9月25日に新宿バルト9にて、スタジオジブリ作品「コクリコ坂から」を鑑賞しました。
コクリコ坂から」は、スタジオジブリ長編映画中では第17作品目となり、監督の宮崎吾郎氏にとっては「ゲド戦記」以来5年ぶりの監督作となります。

コクリコ坂から」は、講談社の「なかよし」に1980年1月号〜8月号にかけて連載された佐山哲郎(作)、高橋千鶴(作画)による全8話からなる同名の少女漫画を原作としていて、単行本は同社から全2巻が刊行された他、昨年に角川書店から新装版が刊行され、今年に同社より文庫版が刊行されました。
アニメ映画化するにあたっては、主人公や母などの登場人物の姓や名前を変更した、賭け麻雀の設定をカットした、オリジナル要素として高校の文化部部室棟「カルチェラタン」が登場するなど、原作から大きく変更されて再構成されているようです。(原作は未読です。)


1.あらすじ
東京オリンピックの開催を目前に控える日本。
横浜のある高校では、明治時代に建てられた由緒ある建物を取り壊すべきか、保存すべきかで論争が起きていた。高校生の海と俊は、そんな事件の中で出会い、心を通わせるようになる。

2.客層
「劇場版魔法先生ネギま!」「劇場版ハヤテのごとく!」に続けて鑑賞しましたが、客層は先ほどとは一変してカップルの姿が多く見られ、中には高齢者の姿もありました。
オタク向けアニメ映画と一般向けアニメ映画との客層の違いを思い知らされることとなりましたが、私はジブリ作品も好きなので何とも…。ただ、先ほどに続いて鑑賞した同類と思われる方々も何組かはいたので、個人的には嬉しかったですね。


3.感想

全く予備知識無しで鑑賞したわけですが、作品を見終わって率直に思ったのは、宮崎吾朗、何があった!?」ということです。
ゲド戦記」では、何から何まで父親である宮崎駿監督と比較されることが多く、「テルーの唄」を歌うシーンでの背景が手抜きである、メッセージ性がなくて伝えたいことがしっかりとしていない、見せ場がないから見ていて退屈、クライマックスの表現が乏しい…などなど、散々な評価が見られましたが、私としてもスタジオジブリ作品としてみた場合、非常に微妙であると感じました。それは絵であったり演出であったりもそうで突っ込みどころ満載なのですが、やはり設定と矛盾しているという点が非常に大きかったのではないかと思います。
しかし、「ゲド戦記」から5年後の「コクリコ坂から」では、非常に大きく成長した、様変わりしたのではないかと感じました。あの頃の稚拙な感じが薄れていったのではないかと思います。
作品の雰囲気としては「耳をすませば」を彷彿とさせるところもありましたし、学生の部室棟である「カルチェラタン」内部の描写は、「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋に似ているのではないかと感じました。
ただ、まだ足りないなと思うところもあって、作品としては不完全な部分もいくつかあります。
例えて言うなら、残っていて完全に潰しきれていない、潰した跡形も残ったままで完全に消えていない、搾り出すとまた血が出てくるような……まるで、膿やニキビのようです。例え方が酷いですが。
前述した通り原作は読んでいませんが、話の展開が早過ぎたのではないかと見てて思いました。これは全体を通して見て感じられることですが、特に俊への告白に至る海ちゃんの葛藤の描写が少なかったために、唐突感が否めませんでしたし、ラストの種明かしもあっさりとしていてストーリーに深みを感じられませんでした。
「ラストがあっさりとしている」という点では、原作があるアニメ映画やテレビアニメシリーズの映画化なら尚更そうですが、アニメ映画では短く纏めてしまいたいがためにあっさりとした終わり方をしてしまうのは非常に多いので、何も「コクリコ坂から」に限ったことではないですから、そこは大目に見ることにしましょう。
あとは、前作に引き続き多少なりとも矛盾点を感じたことです。折角掃除してリフォームしたカルチェラタンだったのに、理事長がクラブハウスを新設することを宣言して学生達が大喜びするというシーンが、どうも納得いきません。
理事長がクラブハウスを新設するということは、これまでのカルチェラタンは取り壊されることになると思いますし、それまで学生達はカルチェラタンの解体に反対していたはず。老朽化したので再建を要望しているわけではありません。ストーリーに沿えば、「カルチェラタンの建物は今後も継続して使用することができます!解体は行いません!!」で歓喜する学生達…となるはずです。
あとは、アニメ映画にしなくてもできる表現ばかりだなと感じたので、これは実写化しても違和感は感じないと思います。なので、コクリコ坂から」は寧ろ実写化した方が良い作品なのではないかとも思いましたね。
その他、音響(BGM)のボリュームがセリフよりも大きかったので、音響面での整合性がとれていなかった。そこもマイナスですね。
ただ、全体的に1963年という時代設定にあったノスタルジックな演出は評価しますね。学生運動だったり、故・坂本九氏の「上を向いて歩こう」の音源をそのまま使用したり…。
自分はそういったノスタルジックな演出は好きですが、子供にはわからないでしょうし、全体的に見れば大人向けな映画かなと感じましたね。面白かったですけど。

というわけで、作品として評価するなら、星3つ(★★★☆☆)ぐらいでしょうか。
耳をすませば+ALWAYS三丁目の夕日÷2=コクリコ坂から」みたいな感じですね。


ジブリヒロインについては以前も考察しましたが、メル(海)ちゃんいいですね。
やはり、境遇がシリアスだから、しっかりとしていなければならない。だけど、女の子としての青春も謳歌したい、だけど気持ちではなかなか上手く感情表現できず、ツンデレっぽくなってしまう…そんな感じでしょうか。
因みに、海ちゃんのあだ名になっている「メル」とは、フランス語で海を指す「ラ・メール」のことで「メール」が詰まって「メル」となっています。決して、「岸田メル」とかの「メル」ではありません。(笑)


スタジオジブリ 第17作目
コクリコ坂から

キャスト
■松崎海……長澤まさみ
■風間俊……岡田准一(V6)
■松崎花……竹下景子
■北斗美樹……石田ゆり子
■広小路幸子……柊瑠美
■松崎良子……風吹ジュン
■小野寺善雄……内藤剛志
■水沼史郎……風間俊介
■風間明雄……大森南朋
■徳丸理事長……香川照之

スタッフ
■原作……高橋千鶴佐山哲郎コクリコ坂から」(角川書店刊)
■企画……宮崎駿
■監督……宮崎吾朗
■脚本……宮崎吾朗丹波圭子
■プロデューサー……鈴木敏夫
■音楽……武部聡志(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
■提携……スタジオジブリ日本テレビ放送網電通博報堂DYメディアパートナーズ、ディズニー、三菱商事東宝
■特別協賛……KDDI
■特別協力……ローソン、読売新聞
■アニメーション制作……スタジオジブリ
■配給……東宝