楽しくなければテレビじゃない 八〇年代フジテレビの冒険。

なかけん。です。


FNS27時間テレビ」の翌日(25日)に、大学に放送関係の本、しかもフジテレビについて書かれている本はないかな〜と思って蔵書検索してみたら、ありました。
といっても、もう30年ぐらい前の本になりますが、これは貴重な資料なのではないでしょうか。


楽しくなければテレビじゃない―80年代フジテレビの冒険

楽しくなければテレビじゃない―80年代フジテレビの冒険

「楽しくなければテレビじゃない 八〇年代フジテレビの冒険」です。

1980年代当時のフジテレビといえば、1970年代に視聴率が低迷し、局としても迷走を極めていたことから、1981年に「母と子のフジテレビ」から「楽しくなければテレビじゃない」と意識改革を行って局の方向性を改め、現在に続くバラエティ番組中心編成を重きにした「軽チャー路線」に路線変更しました。
その時期に「笑っていいとも!」や「オレたちひょうきん族」などの番組を生み出した結果として視聴者の支持を集めて、翌1982年には年間視聴率三冠王を獲得しました。
1985年には、現在の「AKB48」の前身とも言える、同じく秋元康氏がプロデュースした女性アイドルグループ「おニャン子クラブ」が「夕やけニャンニャン」という番組から誕生し、一大ブームを巻き起こしました。
更に1986年4月には、それまでの8マークから、目玉マークにロゴマークを変更して、翌1987年からは「FNSの日」(「FNSスーパースペシャルテレビ夢列島」「平成教育テレビ」「27時間テレビ」)が始まった時期でもあります。
(ただし、本書が発行されたのは1986年11月。)

本書のまえがきの言葉を借りれば、そんな局として「ノッている」時期に出された本ですが、この本はテレビに造詣が深い16名の放送評論家や大学教授や講師たちなどによる、広い意味での「フジテレビ論」が書かれており、論調やテーマも様々です。
当時の番組から、当時の視聴率から、当時の番組ポスターから、フジテレビのイメージ調査から、マーケティングの視点から…と、様々な角度で時に甘口、時に辛口なコメントからフジテレビを見ていく本になっています。

この本の最後の章では、「フジテレビにとってテレビとは何か」ということが載っているのですが、その中で特に印象に残ったのが、当時は編成局在籍で現在は相談役になっている村上光一氏の言葉でした。
「編成現場で、テレビっていうのは何ですかと聞かれた場合、フジテレビの編成が考えているテレビとは、情報の見せ物である、といつも語っています。基本的に、フジテレビが目指しているすべてのことがらは、テレビの本質と関連させて言えば、"情報の見せ物"につきるのではないでしょうか。感動とか、文化というものは、あとから付随してくるものなのですね。」
「情報は見せ物である」と聞いて、なるほどと思いましたね。
フジテレビは、ニュースにしても、バラエティにしても、ドラマにしても、アニメにしても、ドキュメンタリーにしても、もちろん27時間テレビのような特別番組にしても、全てをひっくるめて我々視聴者に対して惹きつける力を持っていると思います。
これは報道現場に於いても同じだと思いますし、特に昔の「FNNスーパータイム」や現在の「FNNスーパーニュース」では賛否両論あれどわかりやすくて見やすいなと感じますが、それは現場に於いて視聴者に対してわかりやすさを重視してできるだけ多くの人に伝えたいということから来ているのですね。

さらに、現在はもう亡くなられておりますが、横澤彪氏も村上光一氏の言葉を受けて、「放送は、つまるところイベントでなんですね。」とも言っています。
氏は、「笑っていいとも!」をサーカス小屋、「ライオンのいただきます(現・ライオンのごきげんよう)」を化け物屋敷と表現していて、視聴者に見せるためには、どういうふうに膨らますかが決め手となって裏側にドキュメントを作って見せていかなければならない―と言っていました。

要は、こういうことではないでしょうか。
フジテレビは、それまでの「母と子のフジテレビ」から方針を転換して、1981年からスローガンを「楽しくなければテレビじゃない」としている。
これは、視聴率に囚われずにスタッフの思うがままの番組を作っていこうということもあるが、他にも、編成局などでは「フジテレビの番組はイベントであり見せ物である」ということを念頭に置いて番組を制作しているから、「楽しくなければテレビじゃない」としている。
「イベントであり見せ物」であるから、作りこまれても軽いノリで流せたり、遊びゴコロで番組制作ができたり、番組出演者も番組スタッフも社員も一丸となって内輪受けに似た独特のノリを形成することができたり、ドラマでも本来は恥の部分であるNG集を堂々と流せたり、堂々と積極的に他局とコラボレーションしている。
そういったイベントや見せ物である各々の番組を、「お台場合衆国」などのイベントで実際にアウトプットしていて、それを番組として昇華させたのが「FNSの日」である。
だから、若者を中心として幅広い世代に支持と影響を受けていて、それは現在でも脈々と受け継がれている。


あ、本書の内容とは関係ないですが、見て思わず興奮してしまったのを2つほど。

第4章の「波が波を呼ぶ河田町ネバー・エンディング・ストーリー」のところの当時の局舎の写真。
なんと、メインビルは8マークのままなのに、タワービルの方は目玉マークと現行ロゴタイプになっています。
これは、かなり貴重な写真でしょう。
1986年4月頃の写真なんでしょうけど、後にメインビルの方のマークも目玉マークと現行ロゴタイプに張り替えらて、8マークは当時の凱旋門に残ります。
また、お台場の現本社では社員用の入り口に8マークのオブジェがありますね。

発行所のフジテレビ出版の住所が、
「東京都新宿区河田町3-1 郵便番号162」
と書かれていて、時代を感じますね。
もちろん、まだお台場に移転する11年前のことなので、仕方ないですけどね。
今は、河田町コンフォガーデンという高級高層マンションになってて、フジテレビは念仏坂前にある石碑に旧ロゴタイプで残されているだけで、あとはもう痕跡も何も残ってないですけどね…。
以前は、お台場では不便ということで河田町時代からあった新宿支局(旧・第一別館)も残されていましたが、これも取り壊されて、旧本社跡地同様マンションになってしまいました。
現在でしたら、「東京都港区台場2-4-8」ですね。



でも、フジテレビの番組からの影響は計り知れないものがありますね。
本書に書いてある「フジテレビ的ノリ」で思い出したのですが、自分でも時々、フジテレビ的ノリを日常や教会の中に持ち込んでしまう時があります。
・飲み会や食事会は、盛り上がらないと絶対に嫌だ。
・特に内輪同士で盛り上がりたい傾向にある。
・教会で洗礼を受けると言われた時に、最初「オレたちひょうきん族」の「ひょうきん懺悔室」を思い起こした。
・毎年、27時間テレビ放送期間中の日曜日に、教会にフジテレビの番組Tシャツを着てきた。

つまらない生活も視点を変えれば面白い人生になるから、ケでもハレの場にしたい。
普段は真面目だからこそ、その分イベントがある時なんかは思い切りフザけて、ストレスを発散したい。
いつもいつも真面目なばかりじゃ絶対に憂鬱になるから、みんなの前でヤッちゃったり、全裸になったり、体を張ったSMプレイを引き受けたり、飲み会で潰れたときには妄想を寝言に代えて暴れてみたいしてしまうんです。
まぁ、これは実際に自分でやってしまった話で最早芸人のような領域ですけど、そんな感じで自分もフジテレビのようなスタンスを真似て、これまでのツライ経験を跳ね返して、毎日を楽しみたいという想いがあるんです。
だから、自分のモットーは、フジテレビのスローガンを勝手に真似て「楽しくなければ人生じゃない」としていて、それをそのままブログタイトルにしているんです。


自分の体験談で脱線してしまいましたが、
要はフジテレビの裏側も凄かったと、思い切りノッてるなと、そういうことです。(笑)



「楽しくなければテレビじゃない 八〇年代フジテレビの冒険」
1986年11月13日発行

編者…能村庸一
発行人…中村正勝
発行所…株式会社フジテレビ出版
発売元…株式会社扶桑社